【本の内容】“再生可能エネルギーを考える” 
               
≪原発に有終の美を≫ 

 はじめに

国の復興には電力が不可欠である。1945年8月15日敗戦。日本全土が焦土化し、国民は失望のどん底にいた。この荒廃した経済の再建を目指し、時の政府は、石炭鉱業、鉄鋼業、肥料工業、電気事業などを重点産業と位置づけ、債権物資の優先的配分を実施。敗戦から4ヶ月も経ない、1945年12月には、石炭総合対策の推進体として、石炭庁が設置され、石炭の増産に取り組み、奇跡の戦後復興の礎になった。
 2011年3月11日、東日本大震災と福島第1原発事故。当初、福島第1原発の電力不足分を、各電力会社が融通し合い、産業に必要な電力を確保する手はずであった。ところが、ゴールデンウィーク中の 5月6日、突如出された、浜岡原発運転再開中止要請を皮切りに、日本全国の定期点検中の原発が再稼動できない状態に陥り、電力不足の影響は全国に広がった。 原発を全て廃炉にするのは良いが、廃炉した後の数年にもわたる冷却用電力をどこから調達するのか。再生可能エネルギー開発にかかわる電力を何処から供給すれば良いのか。さらに震災から立ち上がろうと躍起になっている東日本の企業とそれを応援しようとしている全国の企業の心境は。 電力不足は、産業を停滞させ、かつ海外市場が他国企業に奪われて行く。エネルギー政策の“総論”は出るが、具体的“各論”が出てこない日本。核抑止力が世界平和の要になっている昨今では“丸腰日本”を海外に印象付けることに成りかねない。このままでは日本を世界の孤児にしてしまう。平和外交ならぬ“弱腰外交”で、海外のエネルギー資源を言い値で購入せざる負えない工業国日本。どうしても、資源生産国にしなければ、我が国の将来は無い。化石燃料への逆戻りを助長する付け焼刃的エネルギー政策を止め、原発に奇麗ごとを並べ立てる前に、プラス思考で将来像を示してこそ、国民は元気を取り戻すと思う。

そこで第1章では「再生可能エネルギー」についての将来像を述べ、第2章では『資源生産国であるからこそ打ち出せるエネルギー政策』、とくに、第1次世界大戦後の工業立国を目指す意気込みと、第2次世界大戦の敗戦から“奇跡的な復興”を成し遂げた心意気を述べる。そして近年の覇権主義をかざした資源国の台頭に、資源の無い我が国が“原発”に心惹かれていった政府の将来政策に理解を示しながらも、それ以上のエネルギー資源を探すべく、第3章では「石油の代替エネルギー」を海水から生み出す方法を述べ、最後の第4章では「原発は再生可能エネルギーが育つまでの繋ぎ」として、現有原発を地域の復興に役立たせながら、“原発に有終の美を” を考えていきたい。
                       2011年8月15日 敗戦記念日に思う

 
 
 
 
 

    筆者の第2の人生(レーザーから再生可能エネルギーへ)

 「人を切るのがCO2レーザーメスならば、目に見えないものを切るのがエキシマレーザーである」1983年O plus E 8月号“エキシマレーザーで何ができるか”の冒頭の一節である。これを執筆する3年前の1980年、私は豊田浩一主任研究員(当時理化学研究所)が購入したばかりのエキシマレーザー(ルモニックスTE-860)の前に居た。ハロゲンガスと希ガスとの組み合わせを変えるだけで、50ナノメーター毎に真空紫外から近紫外線までの強いレーザー光を発振した。先ず試みたのが、発振波長157ナノメーターのF2レーザー。メタンガスに微量の酸素を封入した容器の側面に赤外線分光器をつなぎ、F2レーザー光を照射した瞬間、1040cm-1に富士山を逆さにしたような強い吸収ピークが現れた。何だろう、私は爆発を予想しながら、恐る恐る反応容器の窓を開けた。その瞬間、中から甘い香りが漂って来た。アルコールだ! 触媒無しで、アルコール合成ができたのだ! 私の大学時代の専攻は資源工学。大学院で100WのCO2レーザーを自作しながら抱いた夢は“ダイナマイトや削岩機の代わりに大出力CO2レーザーを使って、鉱山の岩盤を砕き、資源開発をやるぞ”。その開発に、私の夢をかなえてくれるだろうと考えたのが、理化学研究所・新レーザーグループだった。ところが私の目の前に現れた、全く性質を異にするエキシマレーザー。被加工物を構成する分子の振動によって発生した熱により“熱破壊”加工するのはCO2レーザー。ところが、エキシマレーザーは、その光が持つ光子エネルギーで被加工物を構成する分子や原子の結合を“切ったり貼ったり”する“分子制御”加工を得意とした。 私が作った表「分子の結合解離エネルギーと波長の関係(O plus E 8月号/1983年)」は、参考文献としてあるいは企業のカタログ等で広く紹介され、その内に、出典が記載されないまま、一人歩きをするほど広まった。 今でも、エキシマレーザーの普及はこの表が貢献したと自負している。

このエキシマレーザーの分子制御技術を携えて、1983年4月、東海大学工学部電気工学科に赴任した。そして卒業研究でレーザーをやりたいと、多くの学生が集まって来た。小さな研究室は大学院生を含めて20人を超した。終電車がなくなるから帰れと言っても、帰らない学生達。そんな好奇心旺盛な学生達に支えられ、金属、プラスチックスなどのあらゆる固体表面から分子や原子を引き抜き、そこに特殊な官能基を置換してレーザー照射部のみに機能性を与える“光表面改質法”を完成させるには時間はかからなかった。これらの研究成果は、学生が筆頭者として、毎年秋と春に開催される応用物理学会と1月開催されるレーザー学会で発表。その数、在職した21年間で、レーザー学会211件、春・秋の応用物理学会で388件、その他の学会やシンポジウムで209件。 現地実行委員長として、東海大学沼津校舎で開催したレーザー学会学術講演会第12回年次大会では一研究室としては最高の26件を発表した。大学院生は必ず海外発表をした。その数130件。その中でも、2004年12月、ボストンで開催されたMRS材料国際会議とサバナで開催されたMST表面改質会議には11名の学生を率いて渡米し、12件(MRS:8、MST:4)の発表を行なった。この21年間で、最も思いで深いのが、フッ素樹脂(テフロン)の接着だった。テフロンの末端原子のフッ素を引き抜き、そこに親水基(OH基)を置換して親水性に、あるいはメチル基(CH3基)を置換して親油性にして、フッ素樹脂表面をエポキシ接着剤と同じ官能基に換えるという、全く新しい化学的方法で強接着を実現した。この間、多くの学部学生や修士学生を世に送ったが、博士課程後期に進んだ学生は2人。その中の一人、大越昌幸君(現防衛大学校)は、フッ素樹脂のフッ素を引き抜き、そこに酸素を架橋原子として銅原子を置換して光化学的手法で導電性フッ素樹脂を開発し、プリント基板に応用した。 佐藤雄二君(現東京工業大学)は、アクリル樹脂表面に投影露光により、親水性基と撥水性基を交互に置換したミクロドメイン構造を創製し、水は着くがタンパク質は着かない白内障患者用眼内レンズを開発した。そして、私の定年前年の2004年には、シリコーンオイルを酸素ガス中で光酸化して耐水性、耐熱性、紫外線透過性を満たす石英ガラスの高強度接着と水中でレーザー耐性を発揮するコーティングに成功した。このように東海大学在職の21年間で筆頭者として学会で発表した学生数述べ808人、海外で発表した学生数延べ130人。東海大学から職務発明として出願した特許数は37件。その内、特許登録されたものが国内22件、アメリカ2件、ヨーロッパ1件と、助教授も助手も居ない“学生主体”の村原研究室の成果であった。 

そして学生が居なくなり、年金を貰い始めた2005年、長すぎたエキシマレーザー研究に別れを告げ、大学生時代から憧れていた海洋資源開発に第2の人生航路の舵を切った。そして2007年12月「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え<風力発電による海洋資源回収と洋上工場>」と題する本を出版した。洋上風力で得られた電力で、真下の海水から採取した食塩を溶融塩電気分解して金属ナトリウムを製造する。これを軽油の中に入れて陸地の電力消費地に安全に輸送し、火力発電所で水を注ぎ水素を発生させ、その水素の燃焼エネルギーで蒸気タービン発電を行う。副産物として、何の苦労もせずに得られる苛性ソーダは、従来のソーダ工業の最終製品である。さらに、金属ナトリウム製造工程で得られる副産物の真水、硫酸、塩酸、金属マグネシウムは、これまで大電力を使って製造していた代物。この副産物だけでも採算に合うプロセスである。主製造物の金属ナトリウムは、水よりも軽い電力貯蔵固体として、枯渇の心配が無く、CO2も出さず、放射能も出さない持続可能で再生可能な化石燃料の代替エネルギーとして、私の夢はまだ続く。(「私の人生航路を大きく変えた“エキシマレーザー”」レーザー学会誌 第37巻 第11号 101−102頁(2009年11月)より転写)。

目次

はじめに


1章 今こそ!再生可能な水素社会を ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
  1.1 再生可能な水素社会の魅力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
    1.1.1 再生可能エネルギーを使った持続可能な社会
    1.1.2 持続可能な社会作りに島を挙げて取り組むゴットランド
    1.1.3 水素社会の魅力

 1.2 何故「水素社会の到来は遠い」と言われるか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
    1.2.1 水素は化石燃料より製造費が高い
    1.2.2 水素は危険?
    1.2.3 水素は金属を脆くする
    1.2.4 水素は保管と運搬に金がかかり過ぎる

 1.3 水素社会の到来を早めるために・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
    1.3.1 水素ガスの直接貯蔵を諦める
     1.3.2 “水素の元”をつくり、消費地で水素を生産
    1.3.3 エネルギーの安全保障と資源戦争の無い世界は“海水”から


  1.4 “水素の元”を製造する洋上工場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
    1.4.1 水素の元はナトリウム
    1.4.2 枯渇の心配が無く、地域偏存が無いナトリウム
    1.4.3 洋上風力で電力を作り、真下の海水を電気分解してナトリウムを作る
    1.4.4 ナトリウム製造の副産物は化学工業原料
    1.4.5 “核燃料サイクル”は“高レベル放射能廃棄物”を排出
    1.4.6 放射能廃棄物を一切出さない“ナトリウム燃料サイクル”

第2章 電力は何故必要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
  2.1 資源の無い国の電力作り ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
    2.1.1 “兵糧攻め”に備えた危機管理
    2.1.2 若し燃料が絶たれたら“兵糧攻め” 
    2.1.3 電力とTPP
    2.1.4 食料自給率を75%に
    2.1.5 世界の4大漁場に位置する三陸漁業を救え

  2.2 電力を制するものは世界を制す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
    2.2.1 誰がために電力を作る
    2.2.2 波乱万丈の戦後を生き抜き奇跡の復興を成し遂げた世代は何処
    2.2.3 時代と共に行きぬいた電力会社
    2.2.4 オイルショックを上手く切り抜けた電力会社
    2.2.5 我が国の電気料金は高くない
    2.2.6 2030年の電力事情・青写真
    2.2.7 電力会社間の相互融通関係を崩すな(50Hz/60Hz周波数変換
       変電所)

  2.3 資源生産国であるからこそ打ち出せるエネルギー政策・・・・・・・・50
    2.3.1 エネルギー資源輸出国を体験した日本
    2.3.2 戦後復興は石炭から
    2.3.3 石炭政策の末路
    2.3.4 南部藩が保護奨励した三陸の“塩”
    2.3.5 火力発電所で使う燃料は“塩”作る新エネルギー

  2.4 回転エネルギーを電気に換える発電所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
    2.4.1 何故100万ボルト送電が必要か
    2.4.2 何故三相交流送電が必要か
    2.4.3 発電機は如何にして電力を作る
    2.4.4 何故電力用発電機は三相交流
    2.4.5 水力発電所
       1) 水力発電の曙
       2) 日本一と世界一の水力発電所
    2.4.6 火力発電所
       1) 臨海工業地帯に集まる火力発電所
       2) 石炭火力からLNG火力へ
       3) 自家発電・25%節電とCO2
    2.4.7 原子力発電所
       1) 原発は安全であると信じたい しかし
       2) 日本の原発は何故海岸にあるのか(東京ドーム5杯分の海水が
        必要)
       3) 何故原発は地震を恐れるのか⇒原発を生かすも殺すも
        “冷却水”次第
       4) 原子炉内の冷却水用配管の亀裂を水中溶接で常時修復     
    2.4.8 洋上風力発電所
       1) 世界で6番目に広い排他的経済水域(EEZ)を有する日本
       2) 排他的経済水域や中部太平洋の海底に眠る金属資源や
        レアアースー;マグマが山に噴出するか海底に噴出するか
       3) 深海底資源の新しい揚鉱法
       4) 排他的経済水域での資源開発は洋上風力発電とこれまでに
         培った造船技術
       5) 再生可能エネルギーは風力か太陽光か⇒;世界の考えは
       6) 洋上風力発電の魅力
       7) 洋上風力発電を国策として推進するヨーロッパ

  2.5 何故電力会社は風力発電所を嫌うか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・85
    2.5.1 息切れする発電所はごめんです
    2.5.2 電力の系統連係を乱す小規模発電所はごめんです
    2.5.3 解決策⇒風車の発電機を地上に降ろす

  2.6 深夜電力を狙え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91
    2.6.1 何故深夜電力は安いか
    2.6.2 揚水発電所
       1) 深夜電力と揚水発電所の深い仲
       2) 世界に1つしかない海水揚水発電所(沖縄)

第3章 ナトリウムを作る“洋上工場”・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97

  3.1 ナトリウムは石油の代替エネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97
    3.1.1 ブレークスルー(水素の固体化)
    3.1.2 海水と自然エネルギーで作る“水素の元”
    3.1.3 副産物・苛性ソーダが“永遠の燃料”を作る
    3.1.4 産物だけでも元が取れる
    3.1.5 エネルギーの安全保障と環境保護に貢献
    3.1.6 CO2 25%削減は可能

  3.2 洋上工場の電力は自然エネルギー(自給自足・工場) ・・・・・・・103
    3.2.1 工場は洋上・原料は海水・電力は自然エネルギー
    3.2.2 メガフロート周辺の洋上風力発電所
    3.2.3 メガフロート底部の潮流発電所
    3.2.4 メガフロート甲板上の太陽熱・海水温度差発電所
 
  3.3 洋上工場で生産する製品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109
    3.3.1 海水から得られる資源量と回収順序(1リットルの海水から
       得られる資源)
    3.3.2 ナトリウムの製造
       1) 苛性ソーダを経由してナトリウムを製造する方法
       2) 食塩から直接ナトリウムを製造
    3.3.3 マグネシウムの製法
       1) マグネシウムの需要と生産高
       2) マグネシウムの製法
       3) マグネシウムとナトリウムの上手な使い方
    3.3.4 海水から真水を作る
       1) 海水の96%が真水
       2) 海水を蒸発して真水を作る(蒸発法)
       3) 逆浸透膜で真水を作る
       4) イオン交換膜で真水を作る
    3.3.5 海水から硫酸を製造する(硫黄を使わない硫酸製造)
       1) 産業に何故“硫酸”;が必要か
       2) 従来の硫酸製造法
       3) 海水から作る新しい硫酸製造法
    3.3.6 海水から塩酸を製造す
       1) “胃液”の主成分は“塩酸”です
       2) 産業に何故“塩酸”が必要か
       3) 海水から作る塩酸
    3.3.7 “洋上工場”の卓越した経済性
       1) 洋上工場で必要とする電力の試算
       2) “洋上資源製造工場”の生産効率と真水の電気分解による
         効率比較

  3.4 ナトリウムを燃料に使う火力発電所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129
    3.4.1 空気と水とナトリウムが発電所の燃料
    3.4.2 “高速増殖炉・もんじゅ”の「ナトリウム漏洩」と福島第1原発の
        「水素爆発」から事実を学ぼう!
    3.4.3 “水素の元・ナトリウム”に水を注ぎ水素を作る
    3.4.4 水よりも軽く石油より重いナトリウム(だから安全なのです)
    3.4.5 水素火力発電所⇒水素は炭素の4.4倍のエネルギーを持っている
    3.4.6 火力発電所の廃棄物・苛性ソーダは化学工業の原材料
       1) 製造費“0”の苛性ソーダ
       2) 何故苛性ソーダが必要か
    3.4.7 放射能を出さない夢の“ナトリウム燃料サイクル”

第4章 原発は再生可能エネルギーが育つまでの繋ぎ・・・・・・・・・・・・・・138
  
  4.1 原発に有終の美を
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138
    4.1.1 海岸の原発
    4.1.2 原発の電力と海水から火力発電所用ナトリウムを製造
       1) 海岸の原発
       2) 無人島の原発
    4.1.3 深夜電力でナトリウムを製造

  4.2 原発の第2の人生は火力発電所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・143
    4.2.1 原発の2倍以上の効率で第2の人生をスタートする
       “再興水素火力発電所”
    4.2.2 廃炉後も生活費を送り続けなければならない原発
    4.2.3 筆者の第2の人生(レーザーから再生可能エネルギーへ)

おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・149
参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・151 
図説   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・153  

 図説

第1章

 
 図1.1.1.1 ゴットランド島・ビスビー港から町に入るゲート
 図1.1.2.2 ゴットランド大学で、再生可能エネルギー構想を説明する筆者
 図1.1.2.3 ゴットランドは石灰岩の上に立つ島で、海岸線には海水が浸食して
       できた奇岩が見られる。
 図1.1.2.4 ゴットランド島の資源ごみ収集施設
 図1.1.2.5 ゴットランド島の風車と羊の牧畜とが共存
 図1.2.1.1 水力発電が電力供給の70%以上を占めるアイスランドとノルウエー        及び日本との比較
 図1.3.2.1 水素発生装置を備えた水素燃焼火力発電所と水素ガス・スタンド

 表1.3.2.1 周期表1属元素と2属元素の性質比較

 図1.3.3.1 溶存塩:海水1kg中に溶けている各塩分量
 図1.3.3.2 ゴットランドの海岸で海の水を舐めている筆者
 図1.3.3.3 塩湖と岩塩の分布
 図1.3.3.4 世界の海水塩と岩塩の生産量
 
 表1.4.2.1 海水中の元素濃度

 図1.4.3.1 洋上ナトリウム製造工場と陸上水素燃焼発電構想
 図1.4.5.1 (A)核燃料サイクルと(B)ナトリウム/水素燃料サイクルの比較
 図1.4.5.2 高速増殖炉“もんじゅ”見学中の筆者
 図1.4.5.3 高速増殖炉“もんじゅ”の概念図

第2章

 図2.1.1.1 世界の発電量(2007年)
 図2.1.1.2 世界の一人当たりの電力消費量と国民総所得(2007年)
 図2.1.2.1 主要輸出品の輸出額(1990-2009年の推移)
 図2.1.2.2 日本の総発電量と各発電設備の発電量の占める割合(2008年)
 図2.1.2.3 主要輸入品の輸入額(1990-2009年の推移)
 図2.1.2.4 世界の石油の生産・輸入・輸出量 ( 2007年)
 図2.1.2.5 世界の天然ガス生産量・輸入量・輸出量( 2007年)
 図2.1.2.6 世界の石炭の輸入量・輸出量・生産量 ( 2007年)
 図2.1.3.1 世界の穀物自給率の変遷(1961-2007年の推移)
 図2.1.3.2 産業用電力需要比率 (2008)
 図2.1.3.3 農・漁業・食品鉱業における就業人口推移(1960-2009年)
 図2.1.3.4 各種産業の就業人口の推移(1960-2004年)
 図2.1.3.5 我が国の就業(サービス業を除く)人口の推移(1960-2004年)
 図2.1.4.1 我が国の食料自給率の推移(重量ベース)(1960-2008年)
 図2.1.4.2 我が国の各種農産物の生産量と輸入量 (2005年)
 図2.1.4.3 世界の各種食料自給率(2008年)
 図2.1.4.4 世界の穀物輸入・輸出・生産量(2008年)
 図2.1.4.5 世界の小麦輸入・輸出・生産量(2007年)
 図2.1.4.6 世界のトウモロコシ輸入量(2007年)
 図2.1.4.7 世界の肉輸入量(2007年)
 図2.1.5.1 三陸漁港の漁港別水揚量の推移(1965-2005年)
 図2.1.5.2 漁業の需給・就業者動向(1950-2008年)
 図2.1.5.3 漁業種類別漁獲量(1960-2005)
 図2.1.5.4 世界の水産物の輸入量・輸出量・生産量(2007年)
 図2.2.1.1 世界の発電量(2007年)
 図2.2.1.2 我が国の電力需要(電灯+産業用電力+自家発電)(2008年)
 図2.2.1.3 電気事業者別総発電量 (2008年)
 図2.2.1.4 2005年と2030年(目標)の電源別電力供給量の比較
 図2.2.2.1 我が国の総発電量と国民所得の推移(1920-2008年)
 図2.2.3.1 関東大震災(鎌倉停車場前の被害状況(鎌倉市中央図書館蔵))
 図2.2.3.2 関東大震災(由比ヶ浜海嘯跡−(鎌倉市中央図書館蔵))
 図2.2.4.1 我が国の総発電量の推移(1920-2008年)
 図2.2.4.2 エネルギー源別燃料価格変動(1960-2010年)
 図2.2.4.3 火力発電用燃料消費量の変遷(1920-2008年)
 図2.2.4.4 日本の石炭の需給動向(1880-2009年)
 図2.2.4.5 世界の石炭輸入量の推移(2003→2007年)
 図2.2.5.1 世界の原子力発電施設容量(2009年12月末現在) 
 図2.2.5.2 世界の主要産業立国の産業用電気料金の推移(1990-2008年)
 図2.2.6.1 我が国の発電量の推移と2030年目標値(1920-2030年)
 図2.3.4.1 野田から盛岡の南部藩まで塩を背に積んだ牛「野田ベコ」
 図2.4.1.1 発電所から電力消費地までの長い電気の旅
 図2.4.1.2 福島原発から首都圏までの50(100)万V送電線敷設工事
       見学中の筆者
 図2.4.1.3 高さ100mの鉄塔に送電線を架設工事の様子
 図2.4.1.4 高電圧の漏洩を防ぐ碍子と送電線とを接合する様子
 図2.4.1.5 送電線と送電線とを油圧をかけて接合する様子
 図2.4.3.1 発電機で電気を作る方法
 図2.4.5.1 90年間働き続ける“九州電力・妙見水力発電所” 看板の前の筆者
 図2.4.5.2 80年前に建造されたフーバーダムダム発電所と見学中の筆者
 図2.4.6.1 火力発電所の概念図
 図2.4.6.2 沖縄火力発電所の発電機(A)と見学中の筆者(B)
 図2.4.6.3 燃焼方式別火力発電電力量
 図2.4.6.4 電力需要(電灯+産業用電力+自家発電)
 図2.4.7.1 我が国の原発所在地⇒全て沿岸に位置している(冷却水を
       得るために)
 図2.4.7.2 日本の原発稼動年数と基数 (基数+営業年) 
 図2.4.7.3 沸騰水型原発外略図
 図2.4.7.4 加圧水型原発外略図
 図2.4.7.5 海水を冷却水として使う復水器
 図2.4.7.6 冷却水用配管のレーザー水中溶接と軽水中の耐水・耐熱性反射鏡
        の外略図
 図2.4.8.1 我が国の排他的経済水域(EEZ)と海底資源分布図
 図2.4.8.2 マグマが海底から出て海底鉱物資源を創る
 図2.4.8.3 荷物運搬用潜水艇の概略図
 図2.4.8.4 海底の鉱物資源を複数個連結して浮上させる概念図
 図2.4.8.5 世界主要国の造船竣工量の推移(1970-2009年) 
 図2.4.8.6 世界主要国の銑鉄生産実績の推移(1970-2008年) 
 図2.4.8.7 世界主要国の銑鉄生産・粗鋼・鉄鉱石・石炭生産量
 図2.4.8.8 世界の風力発電施設容量の推移(2000-2009年)
 図2.4.8.9 世界の太陽光発電施設容量の推移(1992-2008年)

 表2.4.8.1 風力発電施設の長所と短所(電力会社側・住民側・発電施設等
       設置者側から見た見解)
 図2.4.8.10 世界の風力発電施設容量の2010年度と2010以前の発電容量比較
 図2.4.8.11 風車(羽根車)の直径の推移(1980-2010年)
 図2.4.8.12 スウエーデン・ゴットランド島・ナスウーデンの洋上風車
 図2.4.8.13 スウエーデン・ゴットランド島・ナスウーデンの沿岸風車群
 図2.4.8.14 取り付けを待つ風車(羽根車)と筆者
 図2.5.1.1 風車(羽根車)が風から受ける運動エネルギー
 図2.5.3.1 我が国の風速が強い地域(1年間に10m/秒以上の風が吹く日数)
 図2.5.3.2 風車頭部(ナセル)から発電機を外し、圧縮空気コンプレッサーに
       替えた風力エネルギー貯蔵システム概念図
 図2.5.3.3 風力・圧縮空気発電所構想概念図
 図2.6.1.1 1日の電力使用量の変化と深夜電力
 図2.6.2.1 揚水発電所概念図
 図2.6.2.2 1日24時間の電力の使われ方と需給運用概念図
 図2.6.2.3 沖縄・やんばる海水揚水発電所を展望台から望む筆者
 図2.6.2.4 やんばる海水揚水発電所玄関前の筆者
 図2.6.2.5 やんばる海水揚水発電所貯水池(上池(A))、発電機室(B)、
       発電機模式図(D)、放水口(下池)に出るトンネル(E)、放水口(F)

第3章

 図3.1.1.1 化石燃料は長距離輸送と長期間貯蔵ができるがCO2を出す
 図3.1.1.2 常温常圧で長距離輸送と長期間貯蔵ができる⇔燃料の条件
 図3.1.2.1 自然エネルギーと海水から資源を生み出す工程図
 図3.1.3.1 水素/ナトリウム燃料サイクル⇒苛性ソーダが作る“永遠の燃料”
 図3.1.6.1 我が国の温室効果ガスの部門別排出量の推移(1990-2010年)
 図3.1.6.2 世界主要国の二酸化炭素排出量と増減率(1990と2007年の比較)
 図3.1.6.3 我が国の温室効果ガス排出量の推移(1990-2020年)
 図3.2.1.1 風力と太陽熱を電力源とするメガフロート(洋上ナトリウム製造工場)
 図3.2.1.2 タンカー改良型洋上ナトリウム製造工場概念図
 図3.2.1.3 各風車タワーに貯蔵した圧縮空気をメガフロートに集めて発電する
       概図
 図3.2.2.1 風見鶏型風車装置概念図
 図3.2.2.2 起き上がり子帽子型風車装置概念図
 図3.2.3.1 メガフロート底部の水流発電と甲板上の風力発電概念図
 図3.2.4.1 温度差熱電子発電装置概念図
 図3.2.4.2 太陽熱温水器で加熱された熱媒を温度差熱電子発電装置に循環
       させる発電の模式図
 図3.2.4.3 熱媒として油を循環させる太陽熱集光型温度差発電概念図
 図3.3.1.1 海水(1kg)からナトリウムを製造する過程で得られる副産物も含めた
       製造工程図
 図3.3.2.1 水溶液電気分解と熔融塩電気分解の比較概念図(工業的には
       電流加熱で加熱される)
 図3.3.2.2 海水から苛性ソーダを経由してナトリウムを製造するプロセス図
 図3.3.2.3 海水中の食塩から直接ナトリウムを製造するプロセス図
 図3.3.3.1  世界のマグネシウム生産高の推移(1937-2007年)
 図3.3.4.1 我が国の水の使用分野と使用量(2006年)
 図3.3.4.2 多段フラッシュ蒸発法による海水の淡水化外略図
 図3.3.4.3 通常浸透(A)と逆浸透(B)との間の状態変化⇒加圧
 図3.3.4.4 沖縄県海水淡水化センター見学中の筆者
 図3.3.4.5 沖縄県海水淡水化センターの海水圧縮ポンプ(B)と逆浸透膜(C)
 図3.3.4.6 イオン交換透析膜法の原理と濃縮塩水回収法の説明図
 図3.3.5.1 硫酸の用途(2009年)
 図3.3.5.2 世界の硫酸の生産高の推移(1988-2008年)
 図3.3.5.3 イオン交換透析膜による硫酸の回収法の説明図
 図3.3.6.1 世界の合成塩酸の生産量(2003年)
 図3.3.6.2 我が国の主要無機化学工業製品の生産量の推移(1970-2009年)

 表3.3.7.1 海水電気分解工場で必要とする消費電力(試算)

 図3.3.7.1 食塩の熔融塩電気分解法(A)と真水の電気分解法(B)の
       生産効率比較
 図3.4.3.1 ナトリウムによる水素発生装置
 図3.4.4.1 ナトリウムの加水分解のメカニズムと生成物の取り出し方
 図3.4.5.1 水素燃焼コンバインドサイクル発電(水素火力発電)の概念図
 図3.4.6.1 世界の苛性ソーダ生産量(2005年)
 図3.4.6.2 苛性ソーダの用途(2009年)
 図3.4.7.1 水素/ナトリウム燃料サイクル模式図(苛性ソーダの再生産で
       発生する水素および酸素は水素燃焼発電の原料に使う)

第4章

 図4.1.1.1 高温海水製造用細管と冷却用細管を有する復水器および真水と
       濃縮海水の製造装置概略図
 図4.1.2.1 原発の電力でナトリウムを製造して火力発電所用燃料として
       備蓄する構想概念図
 図4.1.2.2 備蓄又は輸出用ナトリウムと工業用水の製造に特化した無人島の
       原発施設概念図
 図4.1.3.1 送電ロス⇒(電気事業者別総発電量)−(使用電力量)
 図4.2.1.1 原子炉を廃炉にし、水素燃焼コンバインドサイクル発電に変換し、
       効率を2倍以上に引き上げる 構想概念図 
  
 
  
  あとがき

“ローソク送電/計画停電”:平成23年3月11日 午後2時46分 鎌倉の自宅の2階の書斎で海水淡水化方法と装置に関する特許を書いていた。トイレに立つために描きかけの図面をコンピュータのメモリーに入れたとたんに大きな揺れを感じた。直ぐに階下の母の寝室に急行。車椅子に乗せ、外に連れ出そうとしている時、更に大きな第2波が来た。直ぐに、母を庭の竹やぶに避難させた。そして、2階の書斎に戻ると、棚の本は落ち、ステレオは落ちていた。震源地は何処だろう。TVをつけても停電で駄目。電話も通じない。インターネットも繋がらない。ポーターブルラジオを押入れから探し出し、電池を入れたら、震源地は東北地方で、津波に対する注意をアナウンサーは、繰り返し喚起していた。午後9時電気が付き、TVを見てことの重大性を知った。

 それから数日後始まった“計画停電”。書きかけの海水淡水化に関する特許は、急遽災害地における、海水から真水を造る簡易淡水化装置に形を変え、水の安全保障を第一に図面の描き直しと文書書きに没頭した。停電中でも特許書きを継続するために、車からバッテリーを降ろし、飛行機の中でコンピュータに電源を与えるために購入したDC/ACコンバータを繋ぎ、100V非常用電源を急ごしらえし、蛍光灯スタンド1基とパソコン1台を作動させた。

この非常灯を作りながら65年前を思い出した。当時5歳だった私は、佐賀県の筑後川岸の諸富で敗戦を迎えた。父の勤務していた工場では航空機の燃料に供するためのアルコールを作っていた。この工場の倉庫が筑後川に沿って並び、倉庫の最後に、3軒の社宅が並んでいた。私たちが住んでいたのは2号社宅。倉庫はB-29の焼夷弾投下を浴び、倉庫と1号社宅まで延焼。幸いにも我が家は延焼を逃れた。倉庫に貯蔵されていた砂糖は何日も何日も燃え続けた。消防は筑後川の水

を消火に使った。その水が溜まって、至る所に、真っ黒い砂糖水の池ができた。この砂糖水を目当てに、何千人もの人々が一升瓶を抱え、筑後川に架かる佐賀線の鉄橋の上を歩いて、集まってきた。朝起きてみると、我が家の縁の下はそれらの人達が寝泊りをしていた。家の周りに父が植えていた青いトマトもマクワ瓜も食べられてしまっていた。そんな状態が1ヶ月間続いた。 

その砂糖水騒動が一段落した頃から、毎晩“ローソク送電”や“線香送電”が始まった。現在の“計画停電”の元祖である。西に太陽が沈み、辺りが暗くなると、家庭には電気が送られる。しかしその明るさはローソクの炎のように暗い。これを称して“ろうそく送電”と言い、更に暗くなると線香のように電球のフィラメントだけが赤く色ずく。これを“線香送電”と呼んでいた。

 その真っ暗な“ローソク送電”や“線香送電”が始まっても、アルコール発酵が専門の父は残業で工場から帰ってこない。夕食は父が帰宅してからが我が家の決まりである。腹を減らす育ち盛りの3人の子供たちを前に、母が始めたことは『暗算』であった。食卓の前に座って父の帰りを待つ我々に、5+3+8+18では、何時も真っ先に答えを出すのは、負けず嫌いの一番上の妹であった。そんな折、お隣の友達の住む3号社宅の茶の間からは、煌々と明かりが漏れていた。羨ましくて仕方が無かった。今にして思えば、彼の父親は工学部出身だと言っていたから、蓄電池かトランスで昇圧して、電灯を灯していたのだろう。今般の“計画停電”が、電力事情が今以上に悪かった65年前を思い出させた。

 日本が太平洋戦争に敗れた敗戦記念日8月15日。この6日前の、昭和20年8月9日、母は我が家の菜園のナス畑でナスを採取中に西の空が赤くなったのを見たと言う。長崎の原爆の閃光である。8月6日、広島、そして9日には長崎に投下された原子爆弾。この人為的に撒き散らされた放射能。一生、草木も生えないだろうとまで言われた広島も長崎も、見違えるように復興した。そしてその悪夢から65年経った今、また放射能を放出してしまった。今度は日本人の手で放出してしまったのである。世界で唯一の被爆国日本であるからこそ、原子核の研究は大いにやるが、『原子核には手を染めません』と宣言し、原子力より安全で、かつ資源の枯渇も無いエネルギー源を見出して行かねばならない。そして、福島、宮城、岩手が新産業都市として復興する事を信じて止まない。       2011年5月25日

Tweet
  株式会社 エム光・エネルギー開発研究所   連絡先 E-mail: kabu.m.hikari@beetle.ocn.ne.jp